
『ナキウサギ裁判』をご存知でしょうか?
氷河期の生き残りとも呼ばれ、その愛らしい姿から多くの登山者や自然愛好家に親しまれているエゾナキウサギ。
私が今読んでいる小説・分水嶺(著・笹本稜平)にも登場する「ナキウサギ裁判」が気になったので調べてみました。
今回は1990年代に起きた画期的な環境訴訟「ナキウサギ裁判」の歴史と、現在彼らが直面している気候変動という新たな危機についてまとめます。
この記事の目次
自然の権利を問う「ナキウサギ裁判」とは?

1990年代、北海道の大雪山国立公園内では「士幌(しほろ)高原道路」の建設計画が進められていました。
しかし、その計画ルートはエゾナキウサギの重要な生息地であり、手つかずの自然が残る場所でもある。
「道路建設によって岩場の環境が破壊されれば、ナキウサギの生息そのものが危うくなる」
そうした危機感から、1996年に市民や研究者が建設の白紙撤回を求めて裁判を提起します。
歴史的な転換点:公共事業の中止

この裁判は単なる開発反対運動ではなく、生物多様性の保護を真正面から問う点で画期的でした。
全国的な議論の高まりを受け、北海道は公共事業を再検証する「時のアセスメント(※)」を導入。
その結果、1999年に道路建設の中止が正式決定しました。

一度動き出した巨大公共事業が、自然保護を理由に止められた例として、日本の環境行政史に残る出来事となっています。
※「時のアセスメント」は1997年度に北海道が導入した、長期停滞や社会情勢の変化により効果が低下した公共事業を「時間の経過(時のものさし)」という観点から再評価する制度。
事業継続の妥当性を第三者委員会が検証し、中止・見直しを行うことで、行政改革や効率的な予算執行を目的としています。
氷河期の遺存種・エゾナキウサギの不思議な生態

ナキウサギ裁判によって守られたエゾナキウサギですが、その生態は非常に特徴的だ。
- 独特な住処: 高山帯のガレ場(岩が積み重なった場所)の隙間に生息。
- 冬眠しない: 夏から秋にかけて高山植物を乾燥させ「干し草」を作り、冬の食料として貯蔵します。
- 寒冷適応種: 低温環境に適応しており、暑さには極端に弱い生き物です。
登山中に「ピッ」という高い鳴き声を聞いたことがある人もいるかもしれません。

姿を見るのは難しいですが、大雪山の自然の豊かさを象徴する存在です。
神々の遊ぶ庭「大雪山」と迫り来る温暖化の脅威

アイヌの人々が「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と呼んだ大雪山。
短い夏に咲き乱れる高山植物と、厳しい気候が生み出した独特の生態系は、日本でも特別な存在です。
しかし現在、エゾナキウサギは地球温暖化という新たな脅威に直面しています。
ナキウサギは気温20度を超える環境では長時間活動できず、涼しい空気が流れ込む「風穴」に依存しています。

近年の気温上昇により、その環境自体が変化しつつあり、生息域はより高標高へと追いやられています。
しかし大雪山の山頂部には限界があります。
かつて人々の声によって開発から守られた命を今度は気候変動からどう守るのか。
登山者としてこの山を歩く私たちも、自然との関わり方を考える時代に入っているのかもしれません。
参考・引用元

- 環境省 レッドリスト: エゾナキウサギ(準絶滅危惧 NT)
- NPO法人 ナキウサギふぁんくらぶ: 保護・調査活動資料
- 北海道庁 生物多様性関連資料: 時のアセスメント経緯
以上、『ナキウサギ裁判』をピックアップしました!
かつては道路開発から守られた大雪山の自然ですが、現在は別の形で自然環境への影響が議論されています。
たとえば釧路市周辺で進むメガソーラー開発のように、再生可能エネルギーであっても自然とのバランスは常に問われ続けています。
山を歩く一人として、「何を守り、どこまで許容するのか」を考え続けたいところです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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