『油絵の下地材の塗り方』をピックアップ!
久しく絵筆をとっていないが、私はこう見えても学生時代は油彩ゼミで「中学・高校の教員免許」の資格も一応所持しています(自慢)。
油絵は今の時代、くさいし手間や時間がかかるし、扱いづらい。
しかしながら、油絵の表現力・堅牢性は捨てがたいもので、古き良き味のあるメディアだ。
油彩画は少し敷居が高いけれど、今日紹介する「下地材の塗り方・コツ」を覚えておけば、あなたの絵が500年後も存在している可能性が高い(油彩の歴史は5、600年あるのだから)。
まずは『なぜ下地を塗るの?』ってところから見ていこう(^^)/
プロフェッショナルな作家ほどオリジナルな下地を工夫していることが多いです。
炭酸カルシウムを使用したり、画家・大岩オスカールさんはコーヒーを入れて深みを出したりしている…。
この記事では「下地作りの基本」を掲載しています。
この記事の目次
そもそも下地って必要?
下地って必要?と訊かれたらもちろん「Yes」だ。
理由は「発色」と「強度」の2つ(もっとあるかも知れないけど)。
発色は後述の作例でも紹介しますが、作品の色に深みが出ます。
暖色系の下地だと作品に温かみが生まれ、寒色系だとクールな印象を受けます。
強度の面では、作品の割れ(亀裂)、付着性、剥離を防ぎ、細密描写や厚塗りなど目的に応じて下地作りが可能です。
学生時代、写実絵画で知られる野田弘志さんの講演会で「ルーブル美術館にある作品でも目を見張る作品は数点くらいしかない。」と仰っていたのが印象的。
さらにオキーフの絵を近くで見た時、あまりにもスカスカな絵でがっかりしていたとも言っていました。
何層も下地を塗って厚みを増すだけで、絵の世界観・存在感が際立つ気がします。
野田弘志さんの作品は鑑賞するだけで、かなり絵の勉強になります。
「このリアリズムはどのように構築したんだろう?」と色々な観点で絵が楽しめます。
野田弘志さんの作品↓↓↓
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『ホルベイン・クイックベース(ホワイト)』の仕様。
私が学生時代から愛用しているホルベイン・クイックベース。
油彩用の速乾性地塗り絵の具だ。
速乾性と言っても塗って乾くまで1~2週間は様子を見たい。
油絵の制作過程で絵が気に入らない場合、絵の上からクイックベースで塗りつぶすこともできます。
※注意※ 塗りつぶす場合、下絵のマチエール(質感)が目立つ場合は、ナイフや紙やすりで絵の具の塊を落とそう。
私が購入したのは300ml。
一般的に10号キャンバスなら7~8枚程度、50号なら2枚塗れる想定だ。
300mlでもずっしり重いのでネット購入がおすすめ。
世界堂だと300㎖で1260円なので、ネット注文でも数十円程度しか変わらないです。
クイック ベースは流動性の下地材です。乾燥後は光沢のない堅牢な下地となり、上に塗った油絵具の固着・のび・発色が良くなります。
キャンバス、綿布(帆布地)、 板や合板パネル、紙ボードなどの他、古いキャンバスの更生にも使用できます。
【制作適正乾燥時問】
・10~15日
【塗布面積】
・600ml…10号キャンバスを約10~12枚、50号キャンバスを約4枚
・300ml…10号キャンバスを約7~8枚、50号キャンバスを約2枚
ホワイトのほかにもベースとなる色があるので、作品のイメージに合わせて検討しよう。
『クイックベースの塗り方』の詳細を見てみよう。
余談ですが、私は木枠と布を別で購入して、自分でキャンバス張りをしています。
雨の日など湿度が高い日にキャンバス張りしたほうが、湿気を含むのでピンと張れる。
クイックベースは「新居の壁のようなにおい」が強くするので、屋外や良く換気した部屋で作業しましょう。
意外と作業時にジェッソが飛び散りやすいので、新聞紙を下に敷くのは必須です(汚れてもいい服装も忘れずに)。
開封後、よ~くかき混ぜる。
下地材は開けると、ヨーグルトのように液体と固体に分離しているので、割りばし等でよくかき混ぜましょう。
私のジェッソは使用してからかなり年月が経っていたので、使えないくらい乾燥していました(^-^;
数回の重ね塗りが基本。
描きたい絵、表現した絵の構想にもよりますが、下地塗りは3,4回を目安に塗っておくと、絵が描きやすい。
少なくとも2回は下地塗りをしておきたいところです。
下の画像のようにキャンバスの目が残ってザラザラしている面とツルツル面があり、ムラが出ないように塗りましょう。
ムラをつけて塗ると絵に空気感が出て面白い表現が狙えるが、やや描きづらいデメリットがあります。
ジェッソの塗り方・コツは?
塗り方のコツは豚毛の刷毛(硬い刷毛)でジェッソを薄く伸ばすように塗っていきます。
いきなりべたべたと塗っていかないことです。
刷毛の方向をランダムに塗る方法もありますが、基本的に一度目は水平方向に…。
数日後、絵が乾いたら垂直方向に塗っていく。
さらに下地に凝りたい方は斜めに塗っていくパターンになります。
幾層にも塗って、キャンバスの布地の目を埋めていくようにゴシゴシ塗っていくイメージ。
赤茶系の絵の具や、絵を描き終えた際に余った絵の具をキャンバスにランダムに置き、ジェッソで伸ばしていく感じです。
ツルツルのキャンバスはとても気持ちがいいものです。
油絵の下地の作例。
私の学生時代の作品で申し訳ないが、下地の作例です。
完成図をイメージして下地を塗っていきます。
暖色系の下地にホワイトを載せていく。
白にも数種類の色を混ぜると良い感じになると画家の奈良美智さんや大岩オスカールさんが言っています。
この背景のホワイトは、ただキャンバスに白い絵の具を塗っただけでは表せない。
信号機の絵はどの光も点灯していない”異常性”を静かに表現してみたかったんです。
札幌で日ハムのパレードが開催された時、パレードよりも「機能していない信号機」の方が印象的だったんですよね(^-^;
下地×ミクストメディアの作例。
次の絵も学生時代の作品(私は大学で硬式野球部だった)。
ミクストメディア (mixed media) とは、一つ以上の媒体または素材を用いた作品のことです。
下地にうっすらと絵が描かれているが、誰かの使用済みキャンバスをジェッソで塗りつぶして描いたのだと思います。
新聞をボンドで貼って、泥臭さを表現。
学生時代は何事にもトライして自分の表現を模索していました。
あえて粗さを残して雰囲気を出す。
わりと最近の、茶系の下地を使った「meeting」と言う作品(F15号)。
完成なのか未完なのか、描いている私も判らないが、「誰もいない存在感」みたいなモノを描きたかった。
イスのモデルは香川県直島へ向かう時のフェリーのテラス席です。
絵の近くに寄ってみると、下地の粗さや筆致が窺えます。
ちなみに私の作品はミンネで販売しているので覗いてみてね(^^)/
下地材のほかに揃えておきたいグッズ
ガンタッカーが便利。
キャンバス張りにはガンタッカーがあれば便利。
釘を使用してキャンバスを貼ることもできますが、作品が気に入らない場合、すぐ布を取り換える事ができるのでおすすめ(木枠に傷が付きにくいし)。
強度的にも釘と大差ないように感じます。
工作やDIYにも役立つので、1台あればかなり便利。
豚毛の刷毛。
先ほど紹介した「豚毛の刷毛」。
ゴシゴシ下地塗りに使うので、すぐボロボロになるけど、下地作りには欠かせません。
筆の後始末はブラシクリーナーで。
下地づくりで刷毛を使い終えたら、油彩用のブラシクリーナーで洗おう。
クリーナー後、クリーナー液をよく落とし、乾燥するのが刷毛の長持ちのポイントです。
以上、今日は『油絵の下地材の塗り方』をピックアップしました!
あなたも下地作りをマスターしてアートライフを楽しみましょう(^^♪
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回作ったキャンバスで「山の絵」を描きました👇制作動画もあります。
油絵の初期費用は?
アート関連の記事はこちらを参照です♪
クリエイター魂が揺さぶられる多肉植物の記事はこちら(^^)
ヒコトピ編集長の絵の販売はこちら(^^)/